Adobeの2026年調査から、画像・動画制作の工程別生成AI利用を整理。写真の不要物除去・合成・色調整と動画の利用を対象別に示し、日本の制作判断に使う際の限界を解説します。
この記事の要点
Adobeが2026年6月に公表した調査では、米国の写真専門職による不要物除去・合成・色調整や、動画クリエイターによる視覚効果への生成AI利用が報告されています。ただし、対象集団は同じではなく、日本の普及率や制作時間の短縮を示す数字でもありません。[1]
01 / REPORTED USE
調査に出てくる「写真専門職」と「動画クリエイター」は、同じ職業集団ではありません。ここでは、報告値を対象別に分けて示します。
米国の写真専門職 / 背景の不要物除去
57.6%
写真の一部を直す工程にも、
生成AIの利用がある。
Adobeの報告値。原文は「substantial use」。
工程別の有効回答数・集計基準は未確認。[1]
以下の割合は、原資料で生成AIの利用を「substantial use」と表現している項目です。設問全文や回答尺度を確認できないため、「毎日使う人」「一度でも試した人」の割合には読み替えていません。
| 制作工程 | 報告値 |
|---|---|
| 背景の不要物を除去 | 57.6% |
| 複数の画像を合成 | 50.0% |
| 色・トーンを調整 | 45.1% |
出典:Adobe、2026年6月、PDF 3ページ。米国の写真専門職が対象。工程別の有効回答数は未確認。[1]
| 対象 | 制作工程 | 報告値 |
|---|---|---|
| 動画クリエイター | 視覚効果 | 48.6% |
| 動画専門職 | カメラ・照明の設置計画 | 8.3% |
出典:同PDF 3ページ。対象が異なるため、2行の差をそのまま工程差とは解釈できません。工程別の有効回答数は未確認。[1]
この数字をまとめて「動画より写真で普及している」と読むのは適切ではありません。まず確認できるのは、新しい素材をつくる以外にも、既存素材を加工する利用が報告されているという点です。
02 / WORKFLOW
生成AIの利用を一つの率で捉えると、撮影の準備、素材の加工、納品前の確認が混ざってしまいます。Visual AI Labでは、工程の位置と、そこで測りたい成果を分けて読むことを提案します。
制作工程マップ
Visual AI Labの整理調査にある項目
カメラ・照明の
設置計画
対象:米国の動画専門職
調査にある項目
不要物除去・合成・色調整
視覚効果
対象:米国の写真専門職/
動画クリエイター
編集部が提案する評価観点
品質を満たすか
修正を含めて時間は減るか
利用率とは別に測る成果
たとえば、背景の不要物除去への利用は、「画像全体をAIで生成した」ことと同じではありません。動画の視覚効果も、「一本の動画を自動で完成させた」ことを意味しません。素材の作成と素材の加工を分けると、導入事例や市場の数字を読み違えにくくなります。
03 / OUR VIEW
以下はVisual AI Labの見解です。
日本の制作チームがこの調査を使うなら、「同じ割合まで導入する」という目標よりも、どの工程を検証対象にするかを考える資料として使うのが妥当です。海外の利用報告だけでは、自社の制作条件で使えるかは決まりません。
新規生成、編集、確認を区別する。試しただけなのか、業務で繰り返し使うのかも別に記録する。
見た目の良さだけでなく、依頼内容や修正指示を満たすかを確認する。
生成時間だけでなく、候補の選別、修正、確認を含む時間で評価する。
利用率が高い工程でも、修正が増えれば期待した時間短縮にはつながりません。逆に、利用率が低いことだけで、その工程に価値がないとも言えません。利用の広がりと、自社で得られる成果は別々に判断する必要があります。
Visual AI Labの背景差し替えの比較や評価方法は、出力の品質を検討するための関連資料です。これらの比較を、今回の調査の利用率や市場全体の性能評価と合算することはできません。
04 / SCOPE & LIMITS
Adobeの調査は、2026年4月27〜30日に実施された米英1,433人の一時点の調査です。内訳は米国専門職403人、英国専門職203人、米国クリエイター485人、英国クリエイター342人。専門職は制作を主な有償業務とする人、クリエイターは必ずしも制作を本業としない人として区別されています。この記事の工程別数値は米国の回答です。[1]
写真・動画の生成AI活用を把握するには、「使う人が何人いるか」に加えて、誰が、どの工程で、どの程度使い、何を得たのかを分ける必要があります。今回の数字は、そのうち工程別の利用を考えるための材料です。
[1]Adobe, How AI Is Redistributing Creative Work(2026年6月)。公式レポート/PDF。工程別数値は3ページ、調査方法は9ページ。資料確認日:2026年8月27日。
第三者調査をVisual AI Labが整理・解説した記事です。Visual AI Lab自身が実施した利用率調査ではありません。工程図と評価観点は編集部による整理です。訂正の連絡先は訂正窓口をご覧ください。